catch-img

住宅会社に求められる新たな役割とは ― 変化する住宅市場で高まる新たな住宅価値(前編)

昨今、人口減少や世帯構成の変化を背景に、新築住宅市場は縮小傾向が続いています。加えて、建設コストや人件費の上昇、技能者不足なども重なり、住宅会社には、より効率的で持続可能な事業運営が求められるようになっています。そうしたなかで注目されているのが、住宅の維持管理やアフターサービスの在り方です。

住宅会社はこれまで、住宅の設計・施工を中心に住まいづくりを支えてきました。しかし近年では、住宅を建てた後も適切な維持管理を行い、住まいの価値を長く維持していくことが重要視されるようになっています。では、なぜこうした変化が起きているのでしょうか。

本記事では、住宅業界を取り巻く環境の変化を踏まえながら、住宅会社に求められる新たな役割について整理していきます。

新築市場は“量”から“質”の競争へ

国土交通省の建築着工統計調査によると、令和7年度の新設住宅着工戸数は74万667戸となり、前年度比6.5%減となりました(※1)。住宅着工戸数の減少は以前から指摘されていましたが、近年では一時的な落ち込みではなく、人口減少や少子高齢化、住宅価格の上昇などを背景とした構造的な変化として捉えられています。

こうした状況を受け、新築住宅市場は量的拡大を前提とした時代から、付加価値によって選ばれる市場へと移行しつつあります。そのため、今後は受注棟数の拡大だけでなく、他社との差別化につながる独自の価値を提供できるかどうかが、これまで以上に重要になります。

一方で、住宅会社を取り巻く事業環境も厳しさを増しています。建設資材価格の高騰に加え、人件費や物流費も上昇を続けており、住宅建築にかかるコストは年々増加しています。だからこそ、初期価格の安さよりも、将来のメンテナンス費を抑え、資産価値を維持する提案がお施主様に選ばれる理由になってくると考えられます。

住宅性能やデザインといった住宅そのものの価値に加え、長期保証や維持管理、引き渡し後のアフターサポートといった「住宅購入後の価値」も重視されるようになってきています。住宅会社に求められる役割も、住宅を建てることから始まり、住まい手が長く安心して暮らせる環境を支え続けることへと広がりつつあります。

※1 出典元:国土交通省建築着工統計調査報告書(令和8年4月)

人材不足がアフターサービスにも及ぼす影響

もう一つの大きな課題が、人材不足です。

住宅建設を支える技能者は年々減少しており、野村総合研究所の予測では、2040年までに約30%減少するとされています(※2)。特に大工不足は深刻であり、住宅の建築だけでなく、将来的な維持管理にも影響を及ぼす可能性が指摘されています。

人材不足というと施工現場に注目が集まりがちですが、その影響はアフターサービスにも及んでいます。住宅会社では、定期点検や問い合わせ対応、修理の手配、OB顧客への対応など、引き渡し後もさまざまな業務が発生します。しかし、新築受注が増えるほど、アフターサービスに十分な人員を確保できないケースも少なくありません。限られた人員で増え続けるOB顧客へ継続的に対応していくことは、多くの住宅会社に共通する課題となっています。

さらに、長期保証の一般化や、定期点検を含めたアフターサービスの重要性の高まりにより、住宅会社と顧客との関係も長期化しています。住宅を引き渡した後も継続的な対応が求められるなか、担当者個人の経験や努力に依存した運用では、安定したサポート体制を維持することが難しくなるおそれがあります。

そのため、人材不足が続くなかでは、特定の担当者に依存しない運用体制の構築や、継続的なアフターサービスを実現する仕組みづくりが重要になっています。

住生活基本計画が示す「循環型住宅市場」

こうした変化は、国の住宅政策にも表れています。

2026年3月に閣議決定された住生活基本計画では、「循環型住宅市場への転換」が重要なテーマとして掲げられました(※3)。これは、従来の「スクラップ・アンド・ビルド」型から、住宅を適切に維持管理しながら長く活用する「ストック型」への転換を示したものです。

従来の考え方

これからの考え方

建てる

維持する

所有する

引き継ぐ

新築中心

ストックの活用

建築時の性能重視

維持管理も含めた価値重視

循環型住宅市場では、高品質な住宅の供給に加え、適切な維持管理や災害対策、住宅履歴の蓄積、DXを活用した持続可能な管理体制の構築などが重要な要素とされています。

つまり、住宅会社には住宅を建てるだけでなく、その後の維持管理やアフターサービスを通じて住まいの価値を支え、住まい手と長期的な関係を築いていくことが、これまで以上に求められています。

※3 出典元:国土交通省新たな住生活基本計画(令和8年3月)

住宅履歴が住宅価値を左右する時代へ

循環型住宅市場への転換が進むなかで、特に注目されているのが住宅履歴です。

従来の中古住宅市場では、築20~25年程度で建物価値が大きく低下する評価が一般的でした。しかし近年では、築年数だけでなく、維持管理の状況や住宅性能なども含めて住宅価値を評価する考え方へと移行しつつあります。

こうした評価において、重要な役割を果たすのが住宅履歴です。住宅履歴とは、

  • 点検履歴
  • 修繕履歴
  • リフォーム履歴
  • 住宅性能に関する情報

などを継続的に記録・蓄積したものを指します。

住宅履歴は、単に修繕の記録を残すためのものではありません。点検や補修の履歴を継続的に蓄積することで、住宅の状態を客観的に把握できるようになり、適切な維持管理が行われてきたことを示す根拠として活用できます。また、過去の点検・修繕履歴をもとに、今後必要となるメンテナンスや維持管理の計画を検討する際にも役立ちます。

また、住宅履歴はリフォーム計画を行う際の情報源だけでなく、住み替えや相続などの場面においても機能します。住宅会社にとっては維持管理を行うための管理情報となり、住宅の所有者にとっては住まいの履歴を示す情報資産となります。このような背景から、住宅履歴は「住宅会社が保管する記録」ではなく、「住宅の資産価値を支える情報」として捉えられるようになっています。

さらに、中古住宅市場では評価方法の見直しも進められています。これまでのように築年数のみを重視するのではなく、維持管理の状況や住宅性能、補修履歴なども考慮した評価への転換が進みつつあります。その一例として挙げられるのが、住宅履歴やメンテナンス状況などを評価に反映する「スムストック」です(※4)。

国土交通省では以前から、中古戸建住宅の建物評価の改善に向けた考え方が示されています。建物全体を一律に評価するのではなく、基礎や構造躯体、設備などを個別に把握し、適切な維持管理や改修が行われた住宅をより適切に評価しようとするものです。こうした考え方が市場全体へ浸透しているとは言い難いものの、近年はスムストックのような取り組みも広がりつつあります。適切な維持管理が行われた住宅の価値を適切に反映しようとする動きは、少しずつ定着し始めているといえそうです。

このように、住宅履歴は住宅を長く活用するための基盤であると同時に、住宅の資産価値を支える重要な情報でもあります。今後は、住宅を建てた時の性能だけでなく、「どのように維持管理されてきたか」という履歴そのものが、住宅価値を評価する重要な指標の一つになっていくと考えられます。

また、住宅履歴として蓄積された情報は、将来のリフォーム提案や住み替え相談などにも活用できる可能性があります。例えば、AIを活用して将来の資産価値や劣化リスクを可視化できれば、「そろそろメンテナンスを検討してみませんか」といった提案にも、より客観的な根拠を持たせやすくなります。

※4 出典元:スムストックとは

住宅購入者の価値観も変わり始めている

住宅購入者の意識にも変化が見られます。

既存住宅の流通量は増加傾向にあり、2023年時点では住宅市場全体に占める既存住宅の割合は約4割となっています(※5)。一方で、新築住宅を希望する人は依然として多く、調査では65%が新築を希望しています。

一方で、注目したいのが「どちらでもよい」と回答した層の存在です。この層には、新築か既存かにこだわらず、価格や立地、性能、保証などを総合的に比較しながら住宅を検討する人も含まれると考えられます。そのため、住宅会社にとっては、住宅が持つさまざまな価値をどのように伝えていくかも重要になっていきます。

また、若年層を中心に、住宅を「住む場所」だけでなく「資産」として捉える考え方も広がっています。働き方やライフスタイルの多様化により、住み替えや売却を将来の選択肢の一つとして考える人も増えており、住まいを見直すことへの心理的なハードルも以前に比べて低くなりつつあります。

こうした住宅の資産性への関心の高まりを受け、住宅性能やデザインだけでなく、将来の資産価値に関わる要素にも注目が集まっています。このような変化は、住宅会社にとっても重要な視点です。住宅の性能や品質だけでなく、引き渡し後の維持管理やアフターサービスまで含めた価値を提案することが、住宅価値の維持や、住み替えや売却、相続といった将来的な選択肢の広がりにつながります。点検や修繕の履歴が適切に残されている住宅は、住み替えや売却を検討する際にも、これまでの維持管理の状況を把握しやすくなります。

このように、住宅履歴は、住まいの将来を考えるうえでの判断材料の一つとなると言えます。住宅を「購入時の価格」で選ぶだけでなく、「長く住み続けた先の価値」まで見据える動きは、今後さらに広がっていくことが考えられます。

※5 出典元:国土交通省住宅経済関連データ(令和7年度)

アフターサービスがこれからの住宅会社の競争力を左右する

新築住宅市場の縮小や人材不足の深刻化に加え、国の住宅政策の転換や住宅購入者の価値観の多様化など、住宅業界を取り巻く環境は大きく変化しています。

こうした変化を背景に、住宅会社には住宅を供給するだけでなく、維持管理や住宅履歴の蓄積を通じて、住まいの価値を長期にわたり支えていくことが求められています。アフターサービスは、住宅価値を維持し、住まい手との継続的な関係を築くとともに、これからの住宅会社の競争力を支える取り組みとなっています。また、アフターサービスを強化することは、顧客満足度の向上にもつながります。満足度の高い顧客からの紹介によって、新たな受注が生まれる可能性もあるため、将来の事業成長を後押しする要素の一つとしても期待できます。

後編では、人材不足が続くなかで住宅会社がどのようにアフターサービス体制を構築していくのか、また、アフターサービスを継続的な顧客接点として活用するための考え方について整理します。

事業開発本部  岡部 健広
事業開発本部 岡部 健広
2008年ジャパンホームシールドに入社。北海道・九州支店長として 拠点運営を担った後、FC部門で全国の加盟店開拓を推進。 現場と営業組織の双方を熟知した強みを活かし、現在はマーケティング部 販促グループにて、市場分析に基づいたプロモーション戦略の策定から 各種販促施策の実行まで幅広く担当している。

タグ一覧

人気記事ランキング

サービスサイトバナー
ジオパーク紀行
地盤研究所
住まいの安心研究所

ジャパンホームシールドが運営する関連サイト

住まいの安心研究所