
【4ステップで解説】OB顧客へのフォローを仕組み化する方法
新設住宅着工戸数は2024年に79万まで落ち込み、2年連続で減っておよそ15年ぶりに80万戸を下回りました(※1)。また、2040年度には61万戸まで減ると見込まれている調査データからも、新築事業だけで収益を確保し続けることに難しさを感じる事業者も少なくないのではないでしょうか(※2)。
一方で、多くの住宅会社は、引き渡し済みのOB顧客を継続的にフォローする重要性を理解しています。具体的には、外壁や屋根、水回りといった箇所の点検やメンテナンスを通じて、関係性を維持していくことが大切です。ただ、引き渡したあとも住まいの相談相手として長く付き合えるOB顧客と関係を保ち続けることも、事業成長においてポイントになることが考えられます。
そこで本記事では、OB顧客へのフォローアップを行う方法について解説します。ぜひ現場でのヒントとして参考にしていただければ嬉しいです。
※1 引用元:国土交通省「建築着工統計調査報告(令和6年計分)」2025年1月
※2 引用元:野村総合研究所「2040年度の新設住宅着工戸数は61万戸に減少」2025年6月
目次[非表示]
- 1.OB顧客フォローの仕組み化前に確認しておきたい3つのこと
- 2.OB顧客のフォローを仕組み化する4ステップ
- 2.1.ステップ① OB顧客情報を整理し、接点を棚卸しする
- 2.2.ステップ② アフターサービスの実施計画を立てる
- 2.3.ステップ③ 実施に必要なリソースを補完する体制をつくる
- 2.4.ステップ④ 標準化とナレッジ共有で仕組みをつくる
- 3.【Q&A】OB顧客のフォローに関するよくある質問
- 3.1.質問① 新築が中心の会社でも、OB顧客フォローに取り組む意味はありますか?
- 3.2.質問② しばらく連絡していないOB顧客に、急に点検の案内をしても営業と受け取られませんか?
- 3.3.質問③ 第三者の検査や保証を付けると、どんな違いがありますか?
- 4.フォローアップの仕組み化で顧客関係の再構築を
OB顧客フォローの仕組み化前に確認しておきたい3つのこと
OB顧客へのフォローを仕組み化しようと考えたとき、いきなり施策から入ると途中で立ち行かなくなることがあります。自社の顧客情報がどこまで整っているのか、点検に手を回せる人がいるのか、その体制は担当者が代わっても続くのか。こうした足元の状況によって、取るべき進め方は変わってくるためです。
そこでここでは、仕組み化に着手する前に確認しておきたい3つのことを取り上げます。
確認① 顧客データはどこにどんな形で残っている?
まず確認したいのが、OB顧客の情報が社内のどこにどんな形で残っているかです。引き渡し台帳、図面、点検の記録、連絡先が、部署や担当者ごとに整理されていることがポイントになります。
なぜなら、誰がいつ引き渡したかは分かっても、設備の型番や保証の期限、これまでにどんな問い合わせがあったかまでたどれるかどうかで、計画的にフォローできるかが大きく変わるからです。
仕組みを支える基盤はこの情報そのもので構成されるものなので、もし顧客データがばらばらになっている場合は、まず情報を整理し、まとめるところから始めるとよいでしょう。
確認② 点検・アフターに割ける社内リソースはどれだけある?
2つ目に確認したいのが、点検やアフター対応に割ける人手と時間です。点検に回り、日程を調整し、報告書をまとめ、簡単な補修まで担う。こうした実務を、新築の仕事と並行してこなせる人がいるか確認することがポイントになります。
なぜなら、引き渡した戸数が増えるほど、点検実施日が土日や繁忙期に集まりやすく、新築の打ち合わせと重なって対応が遅れるリスクも考えられるからです。社内の人員数次第で、自社だけで運用するか、一部を外部に委託するかの選択が変わってきます。
確認③ 現在のフォロー内容は、誰が担当しても実行できる体制か?
3つ目に確認したいのが、いまのフォローが属人化していないかどうかです。「担当者しか状況を知らない」という状態は、その人の異動や退職を機に顧客との関係が途切れてしまうリスクがあります。個人の力量に頼る現状から脱却し、誰でもフォローできる「仕組み化」を進めることが重要と考えられます。
これは裏を返せば、どれだけ特定の人に頼っているか、仕組み化がどれだけ重要かを意味しています。
誰がいつ何を案内したかが記録に残り、担当が代わっても引き継いでいけるか。ここを見ておくと、仕組み化にどれくらい力を入れて取り組めばよいか、見当がつけやすくなります。
OB顧客のフォローを仕組み化する4ステップ
自社の状況が見えてきたら、次はそれを具体的な仕組みへと落とし込んでいく段階です。ここでは、OB顧客のフォローを仕組み化する4つのステップを取り上げます。
ステップ① OB顧客情報を整理し、接点を棚卸しする
最初に取り組むのは、OB顧客情報の整理です。引き渡し台帳や点検の記録、設備の情報、連絡先を一つの台帳やシステムにまとめ、「いつ・誰に・何を伝えるか」を一覧で見渡せるようにします。
設計図書や点検・修理の履歴といった家の履歴をためておくと、あとでリフォームを提案するときのコミュニケーションに活用できます。連絡の回数が減るほど関係も薄れていきやすくなるので、まずは今の顧客との接点を一通り洗い出すと、計画的にフォローを始められる状態を目指してみてはいかがでしょうか。
ステップ② アフターサービスの実施計画を立てる
次に取り組むのは、点検やアフターサービスをいつ実施するかの計画づくりです。引き渡した後は、1か月後・半年後・1年後、そのあとは数年おき、のような間隔で点検を組む会社が多いようです。
点検には、不具合の兆候を早期に見つけることができるメリットに加えて、OB顧客と定期的につながり続ける側面もあります。点検の間隔と設備などの更新時期を把握しておくと、提案に最適なタイミングを逃しにくくなります。
ステップ③ 実施に必要なリソースを補完する体制をつくる
比較項目 | 自社ですべて対応する | 外部に一部またはすべて委託する |
|---|---|---|
自社の状況 | 点検・施工を担える社員がいる会社 | 点検や施工の人手が社内にない会社、引き渡し後の接点が切れがちな会社 |
必要な社内リソース | 点検・提案・施工の体制を自社で確保 | 名簿と窓口があれば始めやすい |
立ち上げの早さ | 体制づくりに時間がかかることもある | 仕組みが用意されている分、早く始めやすい |
自社ノウハウの蓄積 | 経験が社内にたまりやすい | 任せる範囲によっては蓄積しにくい面もある |
顧客との関係 | 自社が直接やり取りを続けられる | 外部委託者に一部委託またはすべて委託して関係を維持する |
3つ目に取り組むのは、計画を実行するための体制づくりです。点検やメンテナンスの実施を自社だけで補完する、またはリソースが不足している部分を外部委託して補完することを検討することを推奨します。
計画を実行する方法は大きく2つに分かれます。
- 自社ですべて対応する
- 外部に一部またはすべて委託する
1つ目は、自社ですべて対応する方法です。自社に点検やメンテナンスを実施できる社員がいる場合、検査や保証の枠組みを活かしながら、提案から工事まで一気通貫で行うことができるでしょう。
2つ目は、不足分を外部へ一部またはすべて委託する方法です。点検や施工の人手が社内になかったり、引き渡したあとの接点が途切れがちだったりする場合は、インスペクションで住まいの状態を診断し、傷み具合に応じてメンテナンスを提案するところまでを外部に任せることもできます。
こうした代行サービスは複数の事業者が提供しています。メンテナンス工事の受注活動まで任せられる会社もあるので、自社で施工体制を持たない会社でも、OB顧客とのつながりを保ちやすくなります。
アフターサービスはすべて自社で対応することだけが正解ではありません。自社の経営資源や人員体制に合わせて、必要な部分だけを委託する方法も、運用全体を任せる方法も、お客様の建物品質を維持管理するために有効な選択肢といえるでしょう。
内製化に固執するのではなく、自社のリソース状況に合わせて柔軟に体制を選ぶことが、長期的な顧客満足の向上と経営の安定化につながるでしょう。
ステップ④ 標準化とナレッジ共有で仕組みをつくる
体制を整えても、進め方が人によってばらつくと、続けるうちにまた特定の人頼みに戻ってしまいかねません。そこで最後は、誰が担当しても同じように動けるよう、現場の具体的な対応方法とナレッジを社内に蓄積することです。ここでは簡単な例をご紹介します。
- 定期点検のチェックリストをつくる
- 一連の対応における担当者の役割を明確にする
まず、定期点検でどこを見るかを一枚のチェックリストにまとめます。確かめる箇所と判断の目安を書き出しておくと、経験の浅い担当者でも視点の抜け漏れがなく対応できることが期待できます。
次に、誰が点検し、誰が提案し、誰が記録を残すのかという役割をはっきり決めます。問い合わせが来てから提案、施工、保証までをどう引き継ぐかを一本の流れとして書き出しておくとスムーズに対応できるようになるでしょう。あわせて、現場で気づいた劣化のパターンや、お客様に実際に喜ばれた提案のノウハウを、チーム内で持ち寄って共有するといいでしょう。
一人の経験知識を社内に蓄積していくと、会社全体の対応の質が底上げされていきます。こうして手順と知見を残しておけば、担当が代わってもフォローが途切れず、仕組みとして根づいていくでしょう。
【Q&A】OB顧客のフォローに関するよくある質問
ここまで、OB顧客フォローの進め方を整理してきました。とはいえ実際に取り組もうとすると、社内やお客様への対応面で迷いが出てくることもあるかと思います。ここでは、OB顧客のフォローに関してよく挙がる3つの質問を取り上げます。
質問① 新築が中心の会社でも、OB顧客フォローに取り組む意味はありますか?
取り組む意味はあります。新設住宅着工戸数が長く減っていくと見込まれるなかで、すでに引き渡した住まいを手入れし更新していく需要は、今後も期待できます。実際に、リフォーム市場は2024年も約7.3兆円と底堅く(※3)、中古住宅が流通に占める割合も、この10年で30.8%から40.4%へ伸びています(※4)。
また、OB顧客との関係づくりは、リフォームだけの話ではありません。点検やメンテナンスで付き合いが続いていると、住み替えや建て替えを考えるタイミングで最初に思い出してもらいやすくなりますし、満足してくれたOB顧客が、知人や家族に推奨してくれることも期待できます。
OB顧客フォローは、実は新築の受注を増やしていくうえでも効いてくる取り組みと考えられるため、新築かリフォームかと分けて考えるのではなく、両方に取り組む会社が増えてきていると考えられます。
※3引用元:矢野経済研究所「住宅リフォーム市場に関する調査を実施(2025年)」2025年8月
※4引用元:国土交通省「既存住宅市場の整備・活性化に向けて」2024年12月
質問② しばらく連絡していないOB顧客に、急に点検の案内をしても営業と受け取られませんか?
引き渡しから時間が空いた相手に連絡を取るのは、気が引けるという声もよく聞かれます。そこで、営業としてではなく「住まいの健康診断のお知らせ」として案内してみてはいかがでしょうか。
住まいは、適切な時期に点検やメンテナンスを重ねていくと、性能や資産価値を保ちやすくなります。反対に、小さな不具合を見過ごすと、あとになって大きな修繕が必要になることもあります。だからこそ、引き渡したあとも住まいの維持管理を一緒に支えていく姿勢で連絡すると、受け取る側も身構えにくくなります。
点検はもともと不具合を早めに見つけるための機会なので、住まいを長く保つためのお知らせ、という形で案内ができるでしょう。そこで気になる箇所が見つかれば、お客様のほうから相談が始まることも少なくありません。
質問③ 第三者の検査や保証を付けると、どんな違いがありますか?
第三者の立場で検査すると、利害から離れた目で住まいの状態を見られるのが特徴です。中古住宅の取引では、建物状況調査について説明することが、2018年4月から不動産会社に求められるようになり、客観的に検査することへの関心も高まっています。
検査の結果を客観的な資料として示し、そこに品質保証を重ねると、お客様にも安心してもらいやすくなると考えられます。
フォローアップの仕組み化で顧客関係の再構築を
新築の着工が長い目で見て落ち着いていくなかで、すでに住まいを引き渡したOB顧客とのつながりは、フォローアップの体制も含めて、もう一度見直してみる価値があると思います。
引き渡したあとの接点が少なくなっていくと、せっかく築いた関係も少しずつ薄れていくため、住まいに不具合が出たときに相談先として思い出してもらえなければ、ほかの会社へ流れていくリスクが生じる可能性があります。しかし、逆に満足のいく対応が続けば、次の紹介や評判につながる期待ができます。フォローを継続していくことが、数年後の紹介や再受注という形でお客様との揺るぎない信頼関係に繋がっていくはずです。
また、取り組み方は、各社が目指す方針によってさまざまです。点検からメンテナンス、提案までをすべて自社でまかない、関係を自社の中で育てていく会社もあります。手の足りない部分だけを外部に任せ、自社の強みと組み合わせてうまく回している会社もあります。そして、実務をまるごと外部に任せても、お客様の満足度を保ちながら、OB顧客とのつながりを大切な価値として活かしている会社もあります。
どれが正解ということではなく、自社の人手や、どこまで自社で抱えたいかに合わせて選択できます。一度にすべてのアフターをフォローしなくても、自社が今できるところから少しずつ積み上げていくのも一つの方法です。
もし、点検や保証の体制を一から自社で整えるのが難しいと感じるなら、外部の仕組みを部分的に、あるいはまるごと借りるのもひとつの方法です。ジャパンホームシールドの「建物サポートシステム ストック型」も、そうした選択肢のひとつとして用意していますので、自社に合うかどうかを確かめる材料として、まずは資料をご覧いただくところから始めていただけたら嬉しいです。






