
「瑕疵では?」と言われた時の住宅会社の一次対応とは?
お施主様から「これって瑕疵ではないですか?」と指摘を受けたとき、次に何をすべきかすぐに判断して行動することが難しいと感じることはないでしょうか?
もし、指摘された箇所の状態をきちんと確認もせずに「対応します」と答えてしまうと、余計な費用が発生するだけではなく、かえって会社の信頼にも悪影響が出るリスクも考えられます。
そこで本記事では、お施主様から瑕疵の指摘を受けた後に現場がとるべき対応を4つのステップに分けて解説します。指摘を受けた後の対応に迷ったときの判断材料として、ぜひお役立てください。
目次[非表示]
「これって瑕疵では?」と言われた時の対応フロー
まずは、お客様から「これって瑕疵ではないか?」と指摘を受けた後に対応すべき、住宅会社の対応フローについて、4つのステップにてご紹介します。
ステップ①ヒアリングと現状確認
まず冷静に話を聞き、指摘内容を正確に把握します。どの箇所にどんな不具合を感じているのか、いつ気付いたのかなど事実関係を丁寧にヒアリングしましょう。
感情的に否定せず、お客様の不安に寄り添う姿勢を示すことが大切です。可能であればその場で写真やメモを取り、記録に残すようにします。初期対応で誠実に状況確認を行うことで、お客様との信頼関係を損なわずに次の対応へ進めます。
ステップ②現地調査・数値による確認
指摘箇所について、早急に現地で状況を確認します。専門スタッフが水準器やクラックスケールなど適切な計測器を用いて、床や壁の傾き、ひび割れの幅・深さなどを測定しましょう。例えば床の傾斜であれば、1メートルあたりの高さの差を測り、傾きの程度を数値化します。ひび割れであれば幅や深さを計測し、鉄筋に達していないか確認します。
こうした客観的な数値データを取ることで、後の判断材料になります。また契約時の図面や仕様書に記載された内容とも照らし合わせて、施工上の誤差か契約内容との不適合なのかを見極める準備をします。
ステップ③契約内容・基準との照合
計測データや現地の状況を踏まえ、その事象が法律上・契約上の瑕疵に該当するかを判断します。契約書や仕様書を確認し、記載された品質・性能と実際の状態を比較します。現在の民法では、引き渡した住宅が品質や性能面で契約の内容に適合しない場合は契約不適合責任(旧瑕疵担保責任)に問われます。まず契約との相違点がないかチェックし、それが住宅の基本的な品質性能に影響するか検討しましょう。
また業界の技術基準や公的なガイドラインも参考にします。例えば新築住宅の場合、床の傾斜が1mあたり3mm以内であれば許容範囲内で不具合(不適合)ではないと判断される一方、明らかにそれを超える傾きがある場合は契約不適合(瑕疵)となり得ます。契約内容と照らし、問題の箇所が「通常あるべき品質」から逸脱していないか、法定の基準を満たしているかを慎重に照合することが重要です。
ステップ④専門家への相談と適切な対応策の決定
社内の技術担当者や現場監督だけで判断が難しい場合は、早めに第三者の専門家に相談します。住宅の瑕疵担保責任保険を扱う保証会社や住宅検査の専門機関に状況を説明し、技術的な見解や対応策のアドバイスをもらいましょう。保証会社(例:住宅かし保険法人)は多数の事例と知見を有しており、施主対応の経験も豊富ですので、客観的な判定に役立ちます。
例えば床の傾斜がグレーゾーン(3/1000以上6/1000未満)の場合や、ひび割れが構造クラックか微妙なケースでは、専門家の検証によって判断が明確になることがあります。社外の専門家を交えることでお客様にも説明しやすくなり、大きなトラブルへの発展を防ぐことにつながります。その上で、瑕疵に該当しないと判明した場合はデータや根拠を示しながら誠実に説明し、必要に応じて補修や調整で対応します。
逆に瑕疵と認められる場合には、速やかに修補方針を決定し、お客様に対して今後の対応計画を丁寧に説明しましょう。「保険で修理費用をカバーできるため追加のご負担なく原状回復いたします」といった説明を行うと、お客様も安心しやすくなります。
瑕疵と施工誤差の違い
「引き渡した住宅に不具合が見つかったら、うちの会社が直さないといけないの?」という疑問を持つ方もいるかもしれません。結論からいうと、新築住宅の場合、売主や施工会社(以下、住宅会社)は法律で定められた範囲の不具合について責任を負います。
2020年4月の民法改正で「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」という名称に変わりましたが、品確法では引き続き「瑕疵」という言葉が使われています。そこでここでは、そもそも瑕疵とは何か、どこまでが住宅会社の責任になるのか、そして住宅取得者にはどんな権利があるのかを整理していきましょう。
法律上の「瑕疵(契約不適合)」とは
瑕疵(かし)とは法律用語で「通常求められる品質・性能を欠いている状態」を指します。2020年の民法改正以降は名称が「契約不適合責任」に変わり、引き渡した住宅が契約の内容に適合しないことが責任追及の基準になりました。
新築住宅の場合、品確法(住宅品質確保法)により売主・施工業者は構造耐力上主要な部分および雨水の浸入を防止する部分について10年間の瑕疵担保責任を負います。
ここでいう瑕疵とは、住宅として本来備えるべき基本性能が損なわれている欠陥のことで、構造的な強度不足や雨漏りなど重大な不具合が典型例です。簡単に言えば「家が本来の役割を果たせないレベルの不具合」が瑕疵に当たります。
一方で、お客様の好みや主観による使い勝手の問題、見た目上の細かな不満などは法律上の瑕疵には該当しません。例えば「ドアの開閉音が気に入らない」「造作棚の高さが思っていたのと違う」といった主観的・感覚的な問題は契約書に明示された仕様との差異でない限り瑕疵ではないのです。
瑕疵はあくまで契約や法が想定する最低限の品質基準に照らして判断される点を押さえておきましょう。
数値で見る瑕疵の判断基準(傾斜・ひび割れなど)
瑕疵か施工誤差かを判断する際には、感覚ではなく数値基準に基づくことが重要です。業界には住宅紛争処理の参考基準などで客観的な目安が示されています。例えば住宅の傾き(床や建物の傾斜)については、国土交通省のガイドラインで次のような基準があります。
傾斜3/1000未満:構造上瑕疵が存在する可能性は低い(許容範囲内)
傾斜3/1000以上6/1000未満:一定程度瑕疵が存在する可能性がある(グレーゾーン)
傾斜6/1000以上:構造上瑕疵が存在する可能性が高い(明らかな欠陥)
(※「1/1000」とは水平距離1000mm(1m)に対する高さ差を指し、6/1000であれば1mで6mmの傾斜)。
新築では通常、1mあたり3mm未満の傾斜であることが求められ、それを超える場合は注意が必要です。傾斜が6/1000を超えるレベルだと、日常生活で玉が転がる、めまいやふらつきを感じるなど支障をきたす恐れがあり、構造的欠陥と判断されます。一方、3/1000未満のごくわずかな傾斜であれば建物の構造上問題ない範囲と考えられます。
次に基礎コンクリートのひび割れについても基準があります。ひび割れは大きく「ヘアークラック」と「構造クラック」に分類されます。ヘアークラックとは幅0.3mm未満・深さ4mm未満程度のごく細いひび割れで、髪の毛のように細かいことからそう呼ばれます。ヘアークラックは見た目の問題で構造強度に影響しないため、施工上の誤差・経年変化の範囲であり瑕疵には当たりません。
一方、構造クラックは幅0.3mm以上または深さ4mm以上に及ぶひび割れで、コンクリート内部の鉄筋に達しているケースも多く危険です。構造クラックが発生すると耐久性・耐震性が低下し、放置すると雨水侵入で鉄筋腐食やコンクリート破壊(爆裂現象)につながるリスクがあります。
したがって、幅や深さを測って構造クラックと判定される場合、それは瑕疵として早急な補修が必要です。一方、ヘアークラックであれば経過観察や表面的な補修で問題ない場合が多いと説明できます。このように、傾斜やひび割れなど代表的な事例では数値基準を示すことで、瑕疵に該当するかどうかをお客様にも分かりやすく説明できます。
新築住宅の瑕疵の保証に関する法律とその役割
ご説明した瑕疵と施工誤差の違いは、すべて法律に基づいていて解説しています。「法律の話は難しそう」と感じるかもしれませんが、住宅会社として知っておくべきポイントを押さえておけば、それほど複雑ではありません。
そこでここでは、新築住宅の瑕疵に関する保証を定めている主な法律として、「品確法」と「住宅瑕疵担保履行法」それぞれについて解説していきます。
品確法
品確法の正式名称は「住宅の品質確保の促進等に関する法律」で、2000年4月にスタートした法律です。この法律で最も重要なのは、新築住宅の売主や施工会社に対して、構造と雨水浸入に関わる部分について10年間の瑕疵担保責任を義務付けている点にあります(※10、11)。
品確法の特徴の1つに、この10年間を契約で短くすることが認められていません。たとえば契約書に「保証期間は5年」と書いてあっても、その部分は無効になり、自動的に10年間の保証が適用されます。住宅取得者を守るために、あえて厳しいルールが設けられているわけですが、住宅会社としてはこの10年間の責任を果たせるよう、施工品質の管理と工事記録の保存をしっかり行うことが求められます。
※10参照元:e-Gov "住宅の品質確保の促進等に関する法律 第94条”
※11参照元:e-Gov “住宅の品質確保の促進等に関する法律 第95条“
住宅瑕疵担保履行法
住宅瑕疵担保履行法は、正式には「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律」といい、2009年10月から本格的に施行されました。この法律の目的は、品確法で定められた10年間の瑕疵担保責任を「確実に果たせるようにする」ことにあります。
また、新築住宅を引き渡す建設業者や宅地建物取引業者に対し、「瑕疵保険への加入」か「保証金の供託」のどちらかを義務付けられています。さらに、引渡し時にはどちらの方法で資力確保をしているかを住宅取得者に説明する義務もあります。もしこの法律に違反すると、罰則を受けたり、建設業法に基づく処分を受けたりする可能性もあるので、改めて理解しておくことが重要です。
【カンタン解説】住宅瑕疵担保責任保険とは
ここまで解説した瑕疵担保責任を確実に果たすため、住宅会社には「資力確保措置」が法律で義務付けられています。その代表的な方法が「住宅瑕疵担保責任保険」(新築住宅かし保険)への加入です。
この保険は、住宅取得者を守るために作られた制度ですが、住宅会社にとっても万が一の修理費用をカバーできるというメリットがあります。「保険の仕組みがよく分からない」という声も聞きますので、ここでは瑕疵保険の基本的な役割から、どこまでが保証対象なのかなどについて解説します。
住宅瑕疵担保責任保険の役割と保証期間
住宅瑕疵担保責任保険は、引渡し後10年以内に瑕疵が見つかった場合、修理を行った事業者に保険金が支払われる仕組みです。この保険を提供しているのは、国土交通大臣が指定した「住宅瑕疵担保責任保険法人」で、現在は住宅保証機構、ハウスプラス住宅保証、日本住宅保証検査機構、住宅あんしん保証、ハウスジーメンの5社が指定を受けています。
保証期間は品確法で定められた瑕疵担保責任の期間と同じ10年間です。住宅会社がこの保険に加入していれば、瑕疵の修理にかかる費用を保険金でまかなえるので、自社の経済的な負担を軽くできます。
住宅瑕疵担保責任の適用範囲
瑕疵保険の対象は、建物のすべての部分ではなく、特定の部分に限られています。具体的には「構造耐力上主要な部分」と「雨水の浸入を防止する部分」の2つで、住宅の安全性と住み心地に直結する大切な部分です(※8)。

「構造耐力上主要な部分」と「雨水の浸入を防止する部分」それぞれに支払われる主な保険金は以下のとおりです。
補修費用(材料費、労務費など)
仮住まい費用・転居費用
損害の調査費用
損害賠償の請求権の保全手続き費用
ご覧のとおり、すべての不具合や費用が保険の対象になるわけではありません。たとえば、クロスの剥離や棚板の取り付け忘れなどは対象外です。
そのため売主や建築会社は、保険に加入していても、追完に備えて一定の資金を準備する必要があるため、対象範囲を正しく理解しておくことが重要です。
※8引用元:国土交通省 “新築住宅に関する法制度 住まいを守る法律”
住宅取得者を守る仕組み
瑕疵保険には、住宅取得者を守るためのいくつかの仕組みが用意されています。その中心となるのが、「直接請求権」です。通常、保険金は保険に加入している住宅会社に支払われますが、住宅会社が倒産などで修理できなくなった場合、住宅取得者が保険法人に直接請求できるようになっています。
また、瑕疵保険に加入している住宅は「住宅紛争処理制度」も利用できます。これは住宅のトラブルが起きたとき、弁護士や建築士が間に入ってあっせんや調停をしてくれる制度で、申請料はわずか1万円。住宅取得者にこうした制度を案内できると、「何かあっても安心」と感じてもらえるはずです。
保証期間終了後は延長保証も可能
法律で決められている保証期間は10年間ですが、住宅会社と住宅取得者の間で特約を結べば、保証期間を最長20年まで延ばすことができます。この延長保証は、他社との差別化を図りたい住宅会社にとって、有効な選択肢の1つです。
延長保証を提供する場合、一般的には10年目に点検を行い、必要があればメンテナンス工事を実施することが条件になっています。住宅会社にとっては、定期点検やメンテナンスを通じて住宅取得者との長期的な関係構築の機会が作れるメリットがあります。将来的にリフォームの相談を受けたり、知り合いを紹介してもらえたりする可能性も広がるでしょう。
ただし、延長保証の内容や条件は保険法人や住宅会社によって違いますので、住宅取得者には事前にしっかり説明し、書面で必ず確認しましょう。
瑕疵の条件を理解して大きなトラブルを防ごう
住宅会社にとって、「欠陥かもしれない」とお客様から指摘を受けたときの対応は非常に重要です。適切に対処すれば大事に至らず信頼関係を維持できますが、誤った対応をすると小さな不満が大きなクレームや紛争に発展しかねません。
今回解説したように、瑕疵と施工誤差の違いを法律・技術の両面から正しく理解し、数値的な根拠をもって説明できるようにしておきましょう。傾斜やひび割れの判断基準を知っていれば、現場で迅速に「これは許容範囲内です」「これは瑕疵に当たる可能性があります」と判断・説明ができ、初期段階でお客様の不安を和らげることができます。
もちろん、そもそも瑕疵を発生させないことが最も大切なのは言うまでもありません。日頃から施工品質の管理徹底と記録保存、チェック体制の強化によって欠陥防止に努めるべきです。しかし建築とは長期に渡るものですから、どれだけ注意しても経年や予測不能な要因で不具合が生じる場合があります。
万が一瑕疵が発生してしまった場合でも、適切に対応できる備えをしておくことが住宅会社の責務と言えます。瑕疵担保履行法に従って保険加入をしているのはその備えの一つですし、社内でクレーム対応マニュアルや専門家ネットワークを用意しておくのも有効でしょう。
実際にトラブルが起きた際には、法に則った手順で迅速かつ誠実に対処することで、住宅取得者との信頼関係を損なわずに済む可能性が高まります。誠意ある対応を続けていけば、「この会社に任せてよかった。また何かあってもきちんと対応してくれるだろう」とお客様に感じていただけるはずです。それは住宅会社にとって大きな財産となり、口コミによる紹介やリピーターの獲得にもつながるでしょう。
法律と技術の両面から瑕疵対応力を高め、大きなトラブルを未然に防ぐとともに、万一発生時も信頼を守れる住宅会社を目指していきましょう。






