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住宅品質と法制度から考える不具合発生時に持つべき2つの視点

「もし建物に不具合が発生したら、瑕疵と経年劣化の違いを見極めた後にお客様へどう説明したら納得してもらえるのか。」

こうした悩みを少しでも感じたことはありませんか?

品質管理を徹底していても、引き渡し後に想定外の事業が発生する可能性はゼロではありません。そのときに、「無償で直すべき瑕疵なのか、有償メンテナンスの範囲なのか」を客観的に判断し、お客様に納得いただける説明をすることが求められます。

しかし、品確法や契約不適合責任といった法制度の知識があっても、それを現場でのお客様対応にどう落とし込み説明すればいいか、判断に迷うケースは少なくありません。

そこでこの記事では、ジャパンホームシールド(以下JHS)の知見に基づき、現場が押さえておくべき住宅品質に関わる法制度の基礎知識と、万が一の不具合発生時に備えて施工段階から意識すべき2つの視点を解説します。

法制度の全体像から実務での対応方法まで、体系的にご紹介しますので、お客様への説明や品質管理にお役立てください。

目次[非表示]

  1. 1.住宅品質に関わる「品確法」と「契約不適合責任」
    1. 1.1.品確法とは?
    2. 1.2.契約不適合責任とは?
    3. 1.3.契約不適合責任で認められる4つの請求権と住宅会社の対応の考え方
  2. 2.住宅瑕疵担保履行法の仕組みと資力確保の方法
    1. 2.1.住宅瑕疵担保責任保険の仕組みとメリット
    2. 2.2.保証金の供託制度とは?保険との違いと特徴
  3. 3.住宅の不具合発生時に必要な2つの視点
    1. 3.1.視点①数値基準による客観的な判断
    2. 3.2.視点②第三者機関による専門的な視点
  4. 4.10年保証後を見据えた長期サポートのあり方
    1. 4.1.住宅の延長保証で住まいのライフサイクルパートナーへ
    2. 4.2.成長する既存住宅市場においてメンテナンス履歴は重要に
  5. 5.品質と保証を通じて信頼を積み重ねるために

住宅品質に関わる「品確法」と「契約不適合責任」

お客様の住まいの品質を長期間にわたって保証することは、現代の住宅業界においてとても重要です。この住宅品質に関わる法制度の中に、「品確法」と「契約不適合責任」があります。

品確法とは?

「品確法」では、特に建物の根幹をなす以下の2点について、初期10年間の瑕疵担保責任が義務付けられています。

対象部分

対象部位

構造耐力上主要な部分

基礎、柱、梁、屋根版、床版など

雨水の浸入を防止する部分

屋根、外壁、開口部など

この初期10年間という期間は、特約によって短縮することができません。住宅会社にとって責任が生まれる一方で、「国が認めた、住宅会社がプロとして10年間は確実に寄り添い続けることの証明」との見方もできます。

契約不適合責任とは?

一方で、2020年4月施行の改正民法により、「瑕疵担保責任」という用語は、「契約不適合責任」へと刷新されました。この変更は、住宅会社が負う責任の概念がより広範かつ具体的になったことを意味しています。

従来の瑕疵担保責任は、「隠れた瑕疵(一見して分からない欠陥)」がある場合に責任を問うものでした。しかし、契約不適合責任では、「種類、品質または数量に関して契約の内容と適合しないもの」があった場合に責任が生じます。

つまり、単に「建物として欠陥がない」ことだけではなく、「お客様と交わした契約(仕様書、図面、打ち合わせ記録)通りの品質を提供できているか」が厳密に問われるようになったのです。

契約不適合責任で認められる4つの請求権と住宅会社の対応の考え方

実際、契約内容と異なる「不適合」が生じた際に、お客様(買主)は以下4つの権利をもつことができます。

権利の種類

概要

追完請求権

修補(直し)や不足分の引き渡し、代替物の引き渡しを求める権利

代金減額請求権

修補が不可能な場合などに、代金の減額を求める権利

契約解除権

契約の目的が達成できない場合に、契約自体を白紙に戻す権利

損害賠償請求権

不適合によって生じた実害の賠償を求める権利

住宅会社にとって一見リスクに見えるかもしれませんが、法制度の「解像度」を上げる意味ではこれからの時代に重要だと考えられます。

例えば、「自然素材の特性による変化」や「許容される乾燥収縮のひび割れ」などを、あらかじめ仕様書や契約時の重要事項として明確に定義しておけば、不当な不適合主張から自社を守ることができます。

「自社が提供する価値」を明確な言葉に落とし込み、管理すること。それが、近年の住宅品質管理における、一つの合理的な形と言えるかもしれません。

住宅瑕疵担保履行法の仕組みと資力確保の方法

品確法で定められた10年間の責任を果たすためには、住宅会社に相応の資金力が必要です。もし重大な瑕疵が発覚した際に会社が倒産してしまえば、お客様は泣き寝入りすることになります。これを防ぐために制定されたのが「住宅瑕疵担保履行法」です。

住宅会社には、補修費用を確実に担保するための「資力確保措置」が義務付けられています。主な選択肢は「保険」と「供託」の2つです。

住宅瑕疵担保責任保険の仕組みとメリット

現在、日本の多くの住宅会社が活用しているのが、国土交通大臣の指定を受けた保険法人が提供する「住宅瑕疵担保責任保険」です。

この制度の最大の特徴は、「事業者が倒産した場合でも、お客様に直接保険金が支払われる」という点に加え、「事業者が存続している場合は、補修を行った事業者に対して保険金が支払われる」点にあります。

事業者は小額の保険料(手数料)を支払うことで、万が一、数百万〜数千万円規模の構造欠陥や雨漏り補修が発生した際のキャッシュフローの悪化を防ぐことができます。

また、保険引き受けに際しての「現場検査」は、自社チェックとは異なる第三者の視点が入るため、施工品質の平準化にも寄与します。お客様にとっても、「プロの検査をパスし、保険という裏付けがある住まい」という安心感は、購入の大きな動機付けとなります。

保証金の供託制度とは?保険との違いと特徴

もう一つの選択肢が、法務局などの供託所に「保証金」を預けておく方法です。この金額は過去10年間に引き渡した戸数に応じて算定されます。

供託のメリットは、物件ごとの保険申し込みや現場検査の手間が省けることです。一方で、多額の資金が長期にわたって固定されるため、非常に高い財務基盤が求められます。

どちらの手段を選ぶかは、各社の経営方針によりますが、重要なのは「どちらの措置を講じているかを、引き渡し時にお客様へ丁寧に説明する義務がある」ということです。

これを単なる事務手続きとして処理するか、自社の信頼性を示すプレゼンスの場とするかで、その後の紹介やリピートといった、長期的な関係性に影響を及ぼす一つの要因になると考えられます。

住宅の不具合発生時に必要な2つの視点

これまで住宅品質や資金確保に関する法制度を整理してきましたが、現場では、引き渡しから数年経つと、お客様から「壁に隙間がある」「床が沈んでいる気がする」といった相談が入ることがあります。

これらが瑕疵(不具合)なのか、あるいは「メンテナンスの範囲内(経年劣化や自然特性による維持管理)」なのか。この一次対応でいかに適切な判断ができるかで、その後のお客様との関係構築において、極めて重要な意味を持つでしょう。

ここでは、住宅の不具合発生時に必要な2つの視点をご紹介します。

視点①数値基準による客観的な判断

1つ目は「数値基準による客観的な判断」です。

もし住宅会社から「大丈夫です」「様子を見ましょう」といった感覚的な説明をされたら、お客様は不安を解消されるどころか不信感が高まるかもしれません。

また、後に瑕疵や不具合が顕在化した場合、「誠実な説明義務を果たしていない」と評価されるリスクも高まります。結果として、意図とは逆に顧客満足度を低下させ、紛争やクレームにつながるケースも少なくありません。

そこで有効なのが、国土交通省の指針や、住宅紛争処理の現場で用いられる「数値基準」です。以下に、代表的な判断基準の一例をご紹介します。

項目

瑕疵の可能性が高い基準(一例)

判断のポイント

床・壁の傾斜

6/1000(1mで6mm)を超える

3/1000未満は許容範囲とされることが多い

基礎のひび割れ

幅0.3mm以上の「構造クラック」

深さや鉄筋の露出の有無も確認

外壁のひび割れ

幅0.5mm以上の貫通ひび割れ

雨水侵入のリスクを重点的に評価

※国土交通省「住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準」より抜粋

例えば、床の傾斜が4/1000であった場合、「基準値以内なので瑕疵ではありません」と突き放すのではなく、「国の基準では6/1000からが構造上の懸念となりますが、4/1000という数値はお客様が違和感を持たれるのももっともです。

「まずは原因を一緒に確認しましょう」と、お客様の感情に寄り添いながら客観的なデータに基づいて説明するといいでしょう。

視点②第三者機関による専門的な視点

2つ目は「第三者機関による専門的な視点」です。

現場の監督やアフター担当者が一人で判断を抱え込む必要はありません。判断に迷うケース、あるいは説明に難渋するケースでは、第三者機関の視点を取り入れることが賢明な戦略です。

瑕疵保険法人の相談窓口や、JHSのような地盤・建物の専門機関による詳細な調査データを活用することで、判断の根拠を「自社の主観」から「専門家の客観」へと移すことができます。

これにより、説得力が増すだけでなく、不当な要求に対する防波堤にもなり、逆に真に補修が必要なケースを早期に発見して損害を最小限に食い止めることにもつながります。

このように、不具合が発生した際は「原因は何なのか」「具体的にどの箇所にどの程度問題が発生しているか」「どう判断すればいいのか」の視点を以て、対応することが重要です。

10年保証後を見据えた長期サポートのあり方

今、住宅業界の関心は初期10年間の保証の先へと移っています。法的な義務が終わる10年目以降は、住宅会社としての長期的なサポート姿勢を改めて示す機会とも捉えられます。

住宅の延長保証で住まいのライフサイクルパートナーへ

近年、多くのトップランナー企業が導入しているのが、延長保証(長期保証)です。

10年目、20年目の定期点検において、必要な有償メンテナンス(防蟻、防水、外壁塗装など)を施工することを条件に、保証期間をさらに10年、20年と延ばしていく仕様のことです。

この延長保証には、住宅会社にとって以下3つのメリットがあります。

メリット

概要

確実なメンテナンス収益の確保

リフォーム受注の取りこぼしを防ぎます。

お客様との接点の継続

「点検」という正当な理由で、定期的にコミュニケーションを取ることができます。

リスクの外部化

第三者による延長保証プログラムを活用すれば、長期的な補修リスクを自社で抱え込まずに済みます。

なかでも、お客様との接点の継続という点は、数字にも表れています。JHSのデータによると、建物長期保証を活用した場合、20年目までの定期点検回数は平均4.9回にのぼります(※1)。これは単に建物の状態を確認する機会としてではなく、リフォームや住み替えといったお客様からの相談を受ける機会にもなっています。

「売って終わり」から「住まいのライフサイクルパートナーへ」という考え方へ転換していく意味でも、延長保証は有効な選択肢といえます。

※1引用元:ジャパンホームシールド株式会社「建物長期保証に関する意識調査レポート2025(2025年7月1日~31日)」

成長する既存住宅市場においてメンテナンス履歴は重要に

日本の住宅政策は「つくっては壊す」から「いいものを作って、きちんと手入れして、長く大切に使う」ストック重視へと大きく舵を切っています。

今後、お客様が将来的に自宅を売却したり、住み替えたりする際、「どのような点検を受け、どのような保証が継続されているか」という履歴(住宅履歴情報)の有無が、建物の査定評価に直結する時代が来ています。

住宅会社として「今、この保証を継続しておくことは、将来のご自宅の価値を守ることにつながります」と提案することが、お客様のライフプランを見据えた誠実なコンサルティングにつながります。

品質と保証を通じて信頼を積み重ねるために

住宅の品質と保証をめぐる複雑な制度は、決して住宅会社を縛り、負担を強いるための足かせではありません。むしろ、それは誠実な住まいづくりを証明し、予期せぬリスクから事業を守り、会社を安定させるための「経営インフラ」としてとらえる視点も、今後より重要性を増していくと考えられます。

徹底した施工品質の管理、数値に基づく客観的な現状把握、そして万が一の際の資力確保。これらを一つひとつ積み重ね、その「安心の根拠」を丁寧にお客様へ言語化して伝えていくこと。この地道なプロセスの先にこそ、「この会社に頼んで本当によかった」という深い満足と、地域で選ばれ続けるブランド力が生まれます。

どのような保証体系を整え、どのタイミングで外部の知見を取り入れるか。その最適解は、各社の規模や経営方針によって千差万別です。

JHSは、地盤から建物、そして引き渡し後の長期保証に至るまで、皆様の「品質」に対する意思決定をデータと知見でサポートいたします。この記事が、住宅会社の不具合対応を信頼に変えるための有益な情報になれば幸いです。

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