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住宅性能評価とインスペクションの違いとは?4つの視点と使い分けについて

住宅会社・不動産会社の現場では、住宅性能評価とインスペクションの違いについてお客様へ説明する場面もあるのではないでしょうか。どちらも第三者の専門家が住宅を確認する仕組みであるため、違いを説明しづらいと感じる担当者も少なくありません。

しかし、住宅性能評価とインスペクションは、どちらも住宅を「評価・調査」する仕組みという共通点はありますが、目的や対象物などさまざまな観点で異なります。

そこで本記事では、住宅性能評価とインスペクションそれぞれの意味を整理したうえで、4つの違いや住まいづくりのフェーズごとの使い分けを解説していきます。

目次[非表示]

  1. 1.【誤解されがち】住宅性能評価とインスペクションの概要
    1. 1.1.住宅性能評価とは
    2. 1.2.インスペクションとは
  2. 2.住宅性能評価とインスペクションの4つの視点と違い
    1. 2.1.違い①実施の目的:等級で示すか、劣化・不具合の有無を確かめるか
    2. 2.2.違い②評価の対象:設計図書・性能か建物の現況か
    3. 2.3.違い③実施者:登録住宅性能評価機関か、既存住宅状況調査技術者か
    4. 2.4.違い④書類:等級付きの評価書か、劣化事象の調査報告書か
  3. 3.住宅性能評価とインスペクションの使い分け
    1. 3.1.①設計・施工段階
    2. 3.2.②維持・管理段階
    3. 3.3.③既存住宅の取引段階
  4. 4.性能評価書がない既存住宅の状態をどう評価する?
    1. 4.1.方法①既存住宅性能評価をあとから取得して性能を等級で示す
    2. 4.2.方法②インスペクションと保証サービスで現況と引渡し後の備えを示す
  5. 5.住宅性能評価とインスペクションに関する一般的なよくある質問
    1. 5.1.質問①既存住宅状況調査とインスペクションの違いは何ですか?
    2. 5.2.質問②既存住宅性能評価書はあとからでも取得できますか?
    3. 5.3.質問③インスペクションの実施は義務ですか?
  6. 6.住宅性能評価とインスペクションの理解をお客様への提案力に

【誤解されがち】住宅性能評価とインスペクションの概要

住宅性能評価とインスペクションは、どちらも第三者の専門家が住宅を確かめる仕組みです。そのため、お客様との会話では住宅性能評価とインスペクションが同じものとして語られることも珍しくありません。「性能評価を受けているなら、インスペクションは不要ですよね」と尋ねられ、答え方に迷った経験をお持ちの方もいるのではないでしょうか。

そこでここでは、住宅性能評価とインスペクションの意味を順に整理していきます。

住宅性能評価とは

住宅性能評価とは、住宅の品質確保の促進等に関する法律(以下、品確法)にもとづく住宅性能表示制度のもとで、住宅の性能を共通の基準によって評価する仕組みです。構造の安定や劣化の軽減、省エネルギー性といった分野ごとに、性能の水準を等級などの形で示します(※1)。この住宅性能評価を利用するかは任意で、義務ではありません。

この住宅性能評価には、3つの種類があります。

  • 設計住宅性能評価:設計図書の段階を評価する
  • 建設住宅性能評価:施工・完成段階の検査を経て評価する
  • 既存住宅性能評価:既存住宅を対象に現況検査を経て評価する

設計住宅性能評価では設計図書を対象に評価し、建設住宅性能評価では設計図書に加えて施工・完成時の検査を踏まえて評価します。そして既存住宅性能評価では、現況検査を踏まえて評価します。

いずれも住宅の性能を共通の基準にもとづいて客観的に評価し、等級などの形で見える化することが、住宅性能評価の役割です(※1)。

※1:国土交通省「住宅の品質確保の促進等に関する法律

インスペクションとは

一方で、インスペクションとは、住宅に施す検査全般を指す言葉です。特定の1つの制度を指す名称ではなく、複数の検査をまとめて呼ぶ総称として使われてきました。国土交通省が2013年に「既存住宅インスペクション・ガイドライン」を策定して以来、基礎的な現況検査の指針が整理されてきた経緯があります(※2)。

評価の対象となるのは、設計図書ではなく建物そのものです。すでに建っている建物の状態を確認し、劣化事象や不具合の有無など現況を把握します。

インスペクションに含まれる検査は、大きく2つに整理できます。(※2)

  • 建物状況調査:宅建業法にもとづき、国の登録講習を修了した建築士である既存住宅状況調査技術者が、既存住宅状況調査方法基準にもとづいて実施
  • 住宅診断(ホームインスペクション):法令で資格要件は定められていませんが、実務では建築士などの専門家が実施するケースが多くあります。

つまり、インスペクションと建物状況調査は必ずしも同じものではありません。建物状況調査は、インスペクションという広い言葉の中に含まれる1つの調査だと整理しておくと、お客様へのご説明もしやすくなるでしょう。

※2:国土交通省「住宅のインスペクション(既存住宅状況調査技術者講習制度等)

住宅性能評価とインスペクションの4つの視点と違い

住宅性能評価とインスペクションは、どちらが優れているかを比べるものではありません。評価の対象や目的が異なるため、優劣をつけるのではなく性質の違いとして整理するのが正確だと考えられます。

そこでここでは、住宅性能評価とインスペクションの違いを4つの視点から解説していきます。どちらを選ぶべきかではなく、それぞれが何をする仕組みなのかを押さえる視点で見ていきましょう。

視点

住宅性能評価

インスペクション

目的

性能を等級で見える化する

劣化・不具合の現況を把握する

評価の対象物

設計図書・性能などのデータ

建物の現況(状態)

実施者

登録住宅性能評価機関

建物状況調査:既存住宅状況調査技術者

住宅診断:実施者による

書類

等級付きの住宅性能評価書

建物の状態をまとめた調査報告書

違い①実施の目的:等級で示すか、劣化・不具合の有無を確かめるか

1つ目の違いは、実施の目的です。住宅性能評価の目的は、住宅の性能を共通の評価軸で等級として示すことにあります。他の住宅と同じ基準で比べられる形にすることで、性能の高さを客観的に伝えることができます(※1)。

一方、インスペクションの目的は、実際の建物の状態を把握することです。ひび割れや雨漏りといった劣化事象が起きていないかを、目視や計測によって確認していきます。

なお、インスペクションの中でも建物状況調査は、瑕疵の有無や住宅の性能を判定するものではありません(※4)。同じインスペクションでも、建物状況調査は劣化事象の有無の把握に範囲が定められているため、お客様に「調査で性能を判定してもらえる」と受け取られないよう、丁寧なご案内が求められます。

違い②評価の対象:設計図書・性能か建物の現況か

2つ目の違いは、評価の対象物です。住宅性能評価が対象とするのは、設計図書や設計内容といったデータです。これに対してインスペクションが対象とするのは、建物そのものの状態になります。

たとえば建設住宅性能評価では、施工段階の検査も行われます。ただし、そこで確かめているのは「設計図書に示された性能どおりに施工されているか」であり、評価の基準となるのはあくまで設計内容です。

一方、インスペクションの検査は、設計図書と照らし合わせるのではなく、いま建物がどのような状態にあるかを確かめるものです。設計図書が残っていない住宅であっても、建物の状態から劣化・不具合の有無を把握できます。

同じ現場での検査でも、設計図書どおりかを確かめるのか、建物の状態そのものを確かめるのか。ここを押さえておけば、残りの違いも整理しやすくなるでしょう。

違い③実施者:登録住宅性能評価機関か、既存住宅状況調査技術者か

3つ目の違いは、実施者です。住宅性能評価を行うのは、国土交通大臣の登録を受けた登録住宅性能評価機関に限られています(※1)。誰が評価するのかが制度として定まっているため、評価の水準が保たれる仕組みになっています。

これに対して、インスペクションは検査主体に幅があります。建物状況調査であれば、既存住宅状況調査技術者が既存住宅状況調査方法基準にもとづいて実施します(※3)。しかし住宅診断まで含めると、実施者の資格要件は制度上定められておらず、依頼先によって検査の内容や深さが変わってきます。

依頼先を検討する際は、実施者がどのような資格を持ち、どの検査に該当するのかを確かめることから始めてみてはいかがでしょうか。

違い④書類:等級付きの評価書か、劣化事象の調査報告書か

4つ目の違いは、受け取る書類です。住宅性能評価では、等級などの評価結果をまとめた住宅性能評価書が交付されます。新築では設計段階の「設計住宅性能評価書」と施工・完成段階の「建設住宅性能評価書」の2種類があり、既存住宅を対象とした評価も設けられています(※2)。

一方インスペクションでは、建物の状態や劣化・不具合の有無をまとめた調査報告書が作成されます。等級のように住宅どうしを比べるための書類ではなく、その住宅の状態を記録するための書類だといえます。

なお、インスペクションのうち建物状況調査については、その結果の概要が重要事項説明の対象になります。対象となるのは、戸建住宅で実施から1年以内、共同住宅等で2年以内の調査結果です(※4)。

※2:国土交通省「住宅の品質確保の促進等に関する法律
※3:国土交通省「改正宅地建物取引業法の施行について
※4:国土交通省「既存住宅流通について(建物状況調査(インスペクション)活用に向けて)

住宅性能評価とインスペクションの使い分け

以上の4つの違いを踏まえると、自社が扱う住宅ではどちらの話になるのか、気になるのではないでしょうか。対象物が異なる以上、両者はどちらかを選ぶものではなく、住宅がどの段階にあるかによって出番が決まってきます。

そこでここでは、住まいづくりのフェーズごとに、住宅性能評価とインスペクションの使い分けを整理していきます。

①設計・施工段階

これから建てる住宅では、設計図書というデータが存在します。そのため、設計住宅性能評価と建設住宅性能評価によって性能を等級で示すことが、この段階の中心になると考えられます。

実際に、性能を等級で示せると、お施主様への説明材料を増やすことができます。たとえば建設住宅性能評価書が交付された住宅では、万が一の紛争の際に指定住宅紛争処理機関を利用できる仕組みがあります(※1)。また、耐震等級などの評価結果は、地震保険の割引や住宅ローンの優遇につながる場合もあります。

この段階では、建物が完成する前から設計図書や設計内容に基づいて性能を評価します。一方、インスペクションは建物の現況を確認する調査であるため、完成後の維持管理や流通の場面でその役割を発揮します。

②維持・管理段階

すでに建っている住宅では、事情が変わってきます。設計図書や住宅性能評価書が手元に残っていないことも多く、そうなると頼りになるのは建物の現況です。仲介や買取再販でお客様に住宅の状態をご説明する場面では、インスペクションが検討の中心になるでしょう。

たとえば買取再販では、仕入れの時点でインスペクションを実施しておくと、再販時の説明材料になり、瑕疵保険の活用にもつなげられます。費用の目安としては、建物状況調査で4~8万円程度からとされ、所要時間は1〜3時間程度が見込まれます(※5)。住宅性能評価の料金は物件の規模や評価機関によって幅があるため、依頼を検討している評価機関へ事前に確認しておくとよいでしょう。

費用だけを見ると負担に感じられるかもしれません。しかし、取引時の説明に役立つことや、引渡し後のトラブル防止につながることまで含めて考えると、費用対効果を踏まえて判断することが大切と考えます 。

③既存住宅の取引段階

既存住宅の売買では、住宅性能評価とインスペクションの両方が、同じ取引の中に登場するケースがあります。物件資料として既存住宅性能評価書の有無を確認する場面と、建物状況調査についてお客様にご案内する場面が、短い期間に続けて訪れるためです。

宅建業法では、媒介契約時に建物状況調査を実施する者のあっせんに関する事項を書面に記載し、重要事項説明では調査が実施されている場合にその結果の概要を説明する流れが定められています(※3)。この場面は法律上の制度に関わるため、「インスペクション」ではなく「建物状況調査」という呼称で整理しておくと、お客様との認識のずれを防ぎやすくなります。

いま話しているのは、設計図書にもとづく性能の話なのか、それとも建物の現況の話なのか。これを区別してご説明できると、取引の場面でも迷わなくなっていくのではないでしょうか。

※5:国土交通省「建物状況調査(インスペクション)活用の手引き

性能評価書がない既存住宅の状態をどう評価する?

既存住宅を扱っていると、住宅性能評価書が手元にない物件に出会う場面は少なくありません。新築時の住宅性能評価は任意の制度であるため、そもそも取得されていないことも一般的だからです。インスペクションが住宅性能評価の代わりにはならないため、「調査を受ければ評価書の代わりになります」というご案内は、お客様の誤解を招くおそれがあります。

そこでここでは、性能評価書がない既存住宅で住宅の状態を示す2つの方法を解説していきます。

方法①既存住宅性能評価をあとから取得して性能を等級で示す

1つ目は、既存住宅性能評価をあとから取得する方法です。住宅性能表示制度は新築だけの仕組みではなく、既存住宅も対象に含まれています。現況検査を経て評価が行われるため、引渡しから年数がたった住宅でも、あとからの取得を検討できます(※1)。

性能を等級という共通の基準で示したい場面では、この方法が選択肢になります。反対に、等級による証明までは求められていない取引であれば、あえてこの方法を採らない判断もあり得るでしょう。何のために性能を示すのかによって、必要性が変わってきます。

なお、新築時の設計住宅性能評価・建設住宅性能評価とは、評価の前提や内容が異なります。お客様にご案内する際は、新築時と同じ評価書が発行されると受け取られないよう、既存住宅としての現況を踏まえた評価であることを補足しておくと、受け止めのずれを防ぎやすくなります。

方法②インスペクションと保証サービスで現況と引渡し後の備えを示す

2つ目は、インスペクションで現況を可視化し、保証サービスで引渡し後に備える方法です。等級は示せませんが、構造耐力上主要な部分や雨水の浸入を防止する部分について劣化事象の有無を確かめることで、住宅のいまの状態をお客様に示せます。

たとえば、「住宅性能評価書はございませんが、専門の技術者による調査で建物の状態を確認する方法があります」とご案内する形が考えられます。あわせて、調査は目視や計測が中心であり、壁の内部など見えない部分までは判定できない点も先に伝えておくと、結果を受け取ったあとの認識のずれを防げます。

さらに、保証サービスを組み合わせると、引渡し後に見つかった不具合への備えにもなります。備え方は大きく2つあります。

  1. 保険法人が提供する検査と既存住宅売買瑕疵保険
  2. 民間の検査会社などが提供する検査と保証制度

1つは、国の制度である既存住宅売買瑕疵保険です。保険法人が定める検査に合格することが加入の条件で、この検査は建物状況調査とあわせて実施できる場合があります。

もう1つは、検査会社などが提供する民間の保証制度です。こちらも所定の検査への合格が前提となりますが、国の瑕疵保険と別の選択肢として、こちらも建物状況調査とあわせて検査を実施できる場合があります(※5)。

調査をご案内する段階で保険や保証の利用希望まで確認しておけば、あとから検査をやり直す手戻りを防ぎやすくなります。保険付保証明書は、一定の要件を満たすことで税制特例の適用書類として活用できる場合もあります。

住宅性能評価とインスペクションに関する一般的なよくある質問

ここまで、違いの整理から実施を検討する視点までを解説してきました。とはいえ、実際のお客様対応では、より細かな疑問が出てくる場面もあるのではないでしょうか。

そこでここでは、住宅性能評価とインスペクションについて、業界で一般的にいただく質問をQ&A形式で整理していきます。

質問①既存住宅状況調査とインスペクションの違いは何ですか?

「既存住宅状況調査」とは、国の定めた基準(既存住宅状況調査方法基準)に基づいて行われる調査のことで、実務上は宅建業法における「建物状況調査」と同じものを指しています(※3)。

一方、「インスペクション」はより広い呼び名であり、この既存住宅状況調査(建物状況調査)のほか、民間の住宅診断なども含めた住宅検査全般の総称として使われています。 つまり、インスペクションという大きな枠組みの中に、国の基準に基づく「既存住宅状況調査」が含まれている関係性です。

質問②既存住宅性能評価書はあとからでも取得できますか?

あとからでも取得することが可能です。既存住宅性能評価は既存住宅を対象とした制度で、現況検査を経て評価書が交付されるためです(※1)。

詳しい注意点は、本記事の「性能評価書がない既存住宅の状態をどう評価する?」で取り上げていますので、あわせてご確認ください。

質問③インスペクションの実施は義務ですか?

調査の実施自体は義務ではありません。宅建業法で宅建業者に求められているのは、媒介契約時にあっせんに関する事項を書面に記載すること、重要事項説明で調査結果の概要を説明すること、そして売買契約時に建物の状況について当事者双方が確認した事項を書面で交付することです(※4)。

実施するかどうかは、売主様・買主様の意向に応じて決まります。

住宅性能評価とインスペクションの理解をお客様への提案力に

住宅性能評価とインスペクションは、どちらも住宅を評価する仕組みでありながら、評価・確認する内容が異なります 。住宅性能評価が設計図書や設計内容に基づいて住宅性能を評価するのに対し、インスペクションは建物の現況を調査・確認します。 大切なのは、いま向き合っている場面が「設計図書やデータで性能を示す場面」なのか、それとも「建物の現況を確かめる場面」なのかを見極めることではないでしょうか。

設計・施工の段階なら住宅性能評価が力を発揮し、すでに建っている住宅ならインスペクションが手がかりになります。そして性能評価書がない既存住宅であっても、既存住宅性能評価をあとから取得する方法や、インスペクションと瑕疵保険を組み合わせる方法によって、住宅の状態をお客様に示すことはできます。

住宅性能評価とインスペクションは、それぞれ役割が異なるため、自社での判断や体制づくりに迷う場面では、第三者機関による調査や検査の活用をご検討いただくのも一案です。本記事が、住宅性能評価とインスペクションを整理し、お客様へご説明する際の判断材料として、少しでもお役に立てれば幸いです。

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Sasa-ell Next編集部のメンバーが、住宅から不動産まで役立つ情報を広く深く発信していきます!

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