
【連載記事】#05「買取再販」で失敗しないための「簡易査定フロー」
不動産の買取依頼が入ってきた場合、「買取価格」を提示することになりますが、多くの場合は、時間をかけ、より詳細な「買取金額」を計算する前に、どれくらいで買い取れるか?という目安を求められます。現場では、この金額をできるだけ早く出すことが求められます。物件情報を持ち込んできた業者の心理から考えますと、すぐに対応してくれた業者さんは印象がよく、買取業者間の競争において優位になることがあります。
ちなみに、この簡易で出された金額で買い取ることを約束するものではありませんが、実際に買い取る段階になり、その金額での買取が難しいと分かれば、情報を持ってきた業者さんとの関係も悪くなるおそれがあり、簡易査定であっても、提示した金額は実務上、一定の責任を伴うものとして慎重に判断する必要があります。
買取再販の簡易査定を進める5つの手順
この簡易査定ですが慣れてくれば一連の流れになりますが、実際には以下のような手順で買取価格の判断をしています。
①物件情報を集める
戸建てとマンションでは、圧倒的に戸建ての方が集めるべき情報が多くなります。
「登記簿謄本」「公図」「測量図」などの基本情報は当然のこと、物件の瑕疵に当たるものがあるか無いか、ある場合は予め情報元から資料をもらうか、最低限内容を確認する必要があります。
瑕疵に当たるもので代表的なものが「境界」「掘削」「越境」です。隣地との「境界」が確定しているか?もし確定していなければ確定してもらうことを条件に買い取ることがベストです。測量図があったとしてもその位置に境界の杭などがなければ、トラブルの元になります。
また、「掘削」は私道に面している土地の場合、上下水道やガスなどを工事する際に必要となりますのでこれも契約条件に入れることでリスクが回避されます。
そして最後が「越境」です。隣地との境界の位置とブロック塀の位置がずれていたり、屋根や軒が隣地に入っていたり、時には埋設管が第三者の土地を経由していたりすることもありますので、これがあるか無いのかは確認する必要があります。なお、越境には、隣地の塀や屋根などが対象地側に入り込んでいるケースと、対象地側の塀や屋根などが隣地に入り込んでいるケースがあります。
また、距離的に可能であればすぐに現地を見てくることをおすすめします。不動産は現場調査が最も大切なのはいうまでもありません。
②リスクと改修費を見積もる
前項のリスクがある物件の場合は、購入した後に買い取った業者が自ら解決する必要があります。例えば、測量されていない、或いは測量図が古すぎる場合などは、購入後にやり直す必要がありますので、コストとして考える必要があります。
また、当然ながら、リスクの解消にかかる費用に加え、再販売に必要な改修費用は見積もります。ただし、簡易査定では詳細な金額を出す時間が限られるため、改修費用は概算で見積もります。建設業者の場合、自社の施工経験や過去の工事実績を、改修費用の見積もりに生かせる点が強みです。
③再販売価格を推定する
その物件がリフォームされて再販売するにあたりいくらで売れるのか?を算出します。実はここが極めて重要なポイントです。
通常は、周辺の物件情報を集めて比較する「取引事例比較法」により計算します。この時、「成約事例」も併せて収集します。販売価格に大きな影響を与えるのが競合物件です。極論、そのエリアがきちんと流通が成立する場所であるのに、他に売りに出されている物件がなければ、比較・競合がないので売れやすくなります。したがって、ここで重要なのは「競合物件」の有無、さらには「競合物件数」です。そしてもう一つが「新築物件」の状況です。「新築物件」が周辺にある場合はその物件の価格や条件との優劣を考える必要があります。
④買取上限額を計算する
③で算出した「再販売価格」からリスクや改修費を引き、次に他にかかる諸経費を引きます。この場合の諸経費とは、登記費用や仲介手数料、金融機関の融資手数料や借り入れて買い取る場合の金利、固定資産税などです。概ね、買取価格の1割程度はかかると考えておきます。これは計算方法がありますので慣れればすぐに算出できるようになります。そして、これらの金額から目標利益金額を確保します。この金額は業者さんによって変わりますが、③の再販売価格で売り出した後、思うように売れないことは現実としてよくあり、その場合値下げをすることになります。
物件の価格帯や販売状況によって異なりますが、一般的な価格帯の物件では、1回の値下げ幅が200万円以上となるケースもあります。そのため、目標利益を200万円だけに設定すると、値下げによって利益を確保できなくなる可能性があり、この場合、200万円しか利益を確保しないというのは現実的ではありません。「再販売価格」―「リスク・改修費」―「諸経費」―「目標利益」=「買取上限額」となります。
⑤仕入れの可否を決定する
こうして算出された「買取上限額」をそのまま業者に伝えるか否か?実際にはこうしたやり取りの間に、多くの場合「売主が売りたい金額」という情報が共有されます。「◯◯◯◯万円以上じゃないと難しい・・・」とか「住宅ローンの残債が◯◯◯◯万円あるので、それ以上じゃないと」などです。こうした売主の希望と乖離した金額でしか買取りできない場合も多くあります。その場合、的外れな金額を正直に伝えるとその業者さんから「この会社は安い額しか出さないから次からの提案はもういいか」となりかねません。
同業者との関係づくりは、継続的な仕入れ情報につながります。
そのため、売主の希望額と買取上限額に差がある場合も、まずは査定の根拠や希望額との隔たりを説明することが基本です。ただし、売主の希望額や物件の状況によっては、具体的な金額を明言すると、今後の相談につながりにくくなる場合もあります。そのようなときは、事情を説明したうえで、あえて金額を曖昧に伝えたり、幅を持たせた目安にとどめたりすることも必要です。金額の伝え方も、次の相談につながる関係づくりの一つです。
第2回では同業者を仕入れ情報につながる相手として捉え、第4回では日頃の関係づくりを取り上げています。当然買い取り側にも事情があります。その物件が買い取りたい地域や価格帯なのか?という無理すべきか否かの判断は重要です。また、逆に買い取りが最近出来ていないことで今回少し無理してでも買った方がいい場合もあるでしょう。その情報を持ってきた業者さんと次に繋がるのであれば無理ない範囲で薄利でも購入した方が良いという判断もあるかもしれません。
経営者向けまとめ
以上、分解するとこうした流れになります。
簡易査定では、物件情報やリスク、改修費、再販売価格、諸経費、目標利益を踏まえて買取上限額を算出し、売主の希望や自社の仕入れ方針も考慮して仕入れの可否を判断します。通常不動産会社はこれらを数分・数時間で算出しています。不動産はスピード勝負である所以です。
- 次回予告(#06)再販価格はこう決める|利益を残す価格設計の考え方
次回は、利益を残す価格設計の考え方、相場の読み方、値付け失敗事例、売れ残る価格設定の共通点 等を解説。どうぞお楽しみに!







