
アフターの仕組みを整え 「旅(家づくり)」をもっと濃い体験に/山一ハウス
山一ハウスさんは、社員14 人中11人が女性という異色の工務店。家づくりを「旅」に見立てる発想の豊かさ、家づくりの流れを美しい言葉で紡ぐ細やかさが見事です。
畑山未佳社長と設計デザイン課の星早小里さんに話を伺いました。
取材・文 = 金井友子(新建ハウジング)

敷地は接道が西面のみの東西に細長い地形に合わせたシックな住まい。窯業系平形スレート張りと吹付塗装仕上げのコントラストが美しい。
「旅」の伴走者
同社では家づくりを「旅」と呼びます。「営業や設計が強い個性を打ち出してグイグイと引っ張る家づくりではなく、主役はお客様。私たちはお客様の人生のテーマをじっくりと聞いて、そのお客様と最も相性がよさそうな3人1組のチームを結成して世界に1つだけの旅のしおりをつくって伴走し、最後はその家で始まる“人生”という新しい旅の扉が開くのを見送るのが山一ハウスのスタイルです」と畑山社長は話します。

畑山未佳社長。「苦しい状況でも何でも楽しむ」のがモットー。

リビング階段を上がった先にはプライベート空間。造作棚もインテリアの一部として提案。
礎・設え・誂え・拵え
旅で大事にしているのは「礎→設え→誂え→拵え」の流れと、日本人が古くから大事にしてきた「ハレとケ」の世界観。家づくりの過程や住まいに込める思いを美しい日本語で表現したいと考え、社員と何度もアイデアを出し合いました。
「礎は土地のことで、お客様の予算と希望に適う場所を一緒に探すところから旅が始まります。設えはいわゆる設計で、周囲の環境や敷地との関係、太陽の動きを丹念に調べたうえでお客様の人生のテーマにふさわしい構造や空間、素材を考えます。そして誂えは仕上げ、拵えは現場のこと」だと言います。

家づくりの過程や住まいに込める思いを美しい日本語で表現している同社。ひとつひとつの事例の名称にもこだわっている。
女性目線を大事にしてきた
畑山社長はかつて美容師でした。まったく経験のない工務店の世界に夫婦で飛び込むことになったのは、初代山一ハウス社長のお父様に頼まれたためだそう。1994年に家業に入り、ご主人で現会長の英裕さんが2005〜14年まで2代目社長を務め、2015年に畑山社長が3代目に就任しました。
28年前、注文住宅の仕事を始めたばかりの英裕さんが真っ先に感じたのは「家づくりには細やかな女性目線がどうしても必要だ」という思いでした。当時は、家事も育児も女性が中心的に担い、家で過ごす時間が長いのも女性なのに、住まいをつくるのは男性が中心。これに違和感を覚えた2代目の意向で20年前から女性スタッフを採用するようになり、気づいたら女性ばかりの工務店に。現在14人いる社員の11人が女性で、現場監督も女性が務めています。
「男性や女性を一括りにするのは本意ではありませんが、あえて言うなら女性は真面目な方が多い。お客様が幸せに暮らすにはどうしたらいいか? を現実的な視点で考えるのが得意です。それが形になり、お客様が喜ぶ姿を見た時に、私たちには女性目線の家づくりが合っていると確信できたんです」と畑山社長。
今回一緒に話を伺った星さんは3年前に入社。結婚前は構造専門の設計事務所で地下鉄の構造設計を手がけていましたが、子育てがひと段落し、もう一度建築業界に戻って自身のスキルや経験を生かしたいと思った時に、近所に同社があったのだとか。山一ハウスには星さんのように建築の資格や経験値がある女性がたくさんいるそうです。

星早小里さん。住宅のスキルを磨き、構造計算を含む全設計業務を社内で完結させるのが目標。

「haretoke labo」の外観。

地元作家や職人たちと建具や家具などを共同製作するなど様々な研究・創作を行っている「haretoke labo」でつくられたオリジナルの洗面。
「礎」を支える心強い味方
受注は好調で、2022年は新築注文住宅を40棟完工。さらにリノベーション物件もあるため全員が手一杯の状況ですが、旅の流れの中で最も大事な「礎」を外から支えているのがジャパンホームシールド(JHS)の及川禅さんだと畑山社長と星さんは口を揃えます。
JHSとの付き合いは2017年の地盤調査から。畑山社長は「地盤調査・解析の信頼性や正確性はもちろん、改良工事の工法をしっかりアドバイスしてくれるうえ品質保証までしてくれる」点、星さんは「毎回スピードが求められるなか、地盤調査や改良工事のスケジューリングを一手に引き受けて素早く対応してくれる」点に助けられているそう。
忘れられないのは2020年の春、地盤改良工事が始まってすぐのタイミングで震度5強の地震が起きた時のこと。「杭がずれたり折れたりしていないか不安で、遅い時間でしたが電話するとすぐに対応してくれ『何か起きてもちゃんとフォローしますから大丈夫ですよ』と言ってくれたんです。それまでも信頼を寄せていましたが、よりその思いを強くした出来事でした」(畑山社長)。

「haretoke labo」の打合せスペース。丸窓がアクセント。

完成展示会を兼ねたお施主様との意見交換会「螺旋座談会」の様子。
自分たちらしいアフターを
一方で、少ない人数で多くの現場を回しているため、引き渡し後の点検や500件超のOB宅フォローを十分にやり切れていない状況に課題を感じていました。ここでも、JHSが提案した「定期点検代行」が同社の強い味方になりました。
工務店に代わって専門の検査員が訪問・点検し、必要があれば簡易補修までしてくれるサービス内容を気に入り、2020年から1・2・5年の定期点検の導入をスタート。2年利用してみて、専門家による適切な点検と報告書の「安心感」を実感できたことから、今年はJHSと連携して「山一ハウスらしいアフター」を育てたいそうです。
畑山社長が考える理想のアフターは、手厚くお世話するのではなく、ある程度のメンテナンスはお客様が自ら行い、何かあった時に頼ってもらえるような自律的な仕組みをつくること。「いま考えているのは、JHSの定期点検時に私たちも顔を出して“住まいの誕生日”を祝いつつ、プロの点検・報告を一緒に確認して、山一ハウスのアフターの考え方やセルフメンテナンスの方法をレクチャーできたらと思っています。いまは引き渡し時に“旅のしおり”をお渡しするのですが、“旅のお守り”として補修キットを加えてもいいかもしれませんね」(畑山社長)。
礎・設え・誂え・拵えにアフターの「存ながらへ」(家を長く存続できる=アフターの充実)を追加。「旅」をより濃く長くすることで、OBからの紹介を増やし、仕事の幅を広げたいと話します。

左から山一ハウスの星さんと畑山社長、JHS 東北支店の及川エリアマネージャーと石川支店長。






