
原価・販管費を抑え、「性能×デザイン」で売るノウハウを全国の工務店に伝授/アーキテックプランニング
アーキテックプランニングは、独自の原価管理システムや人材評価制度を活用しつつ、北海道と九州で「性能×デザイン」にこだわった注文住宅を展開する異色の住宅会社。
2024年11月からは同社が20年以上培ってきた経営・集客・営業ノウハウを全国の工務店に提供する住宅フランチャイズ「デュアルホーム」も始めました。
変化・挑戦を楽しむ相馬哲也社長に話を伺いました。
取材・文 = 金井友子

キッチンは黒でシックにコーディネート。ダイニングテーブルはキッチン並びに配置することで、家事動線を短縮。

梁型フレーム採用のモダンな外観デザイン。建築物省エネ法の基準を大きく上回る住環境も備え、性能×デザインを実現している(北海道マイホームセンター札幌 モデルハウス)。

パソコン、販売、データ分析が好きで、常に「変化」「新しさ」を意識しているという相馬哲也社長。「お客様が求めるものを追求した結果、『性能×デザイン』に行き着きました」。
大工だった相馬社長が2003年に設立した同社は、消費者ニーズを汲み取る「マーケットイン」の販売戦略で実績を伸ばし、「売上高100億円」を目指して走り続けてきました。
「お客様が求める安心・安全・性能にいかに応えるかを考え抜いた結果、行き着いたのが『性能×デザイン』というわかりやすいキャッチコピーと、それを体現する『ClassS』という住宅商品でした。2011年から長期優良住宅を標準化して高性能住宅に取り組んではいましたが、2015年に『性能×デザイン』を打ち出すと成長角度が一気に上がり、売上高は20億円まで倍増しました」。
デザインに関しては、坪単価を採用し、どんなスタイル・形状の外観でも金額が変わらない仕組みを設定。原価と販管費を抑え、『性能×デザイン』に優れた注文住宅を、競合よりも「値頃感」のある価格で提供することで差別化に成功しています。
原価管理で予定外工事を改善
「経営者兼大工」だった相馬社長が28歳で「経営者兼営業」に転じると、「売ること」の面白さに開眼。「売上高100億円」の達成に向けて事業の多角化や規模拡大を念頭に置きつつ、人海戦術に頼らない高効率・少数精鋭型の「経費が極力かからない企業体質」を育ててきました。
そして、開発されたのが、原価管理クラウドシステム「すごいよ山下くん」です。自社の利益率改善を第一の目的に、全国の工務店さんにも使ってもらえるよう数億円かけて開発しました。
また、「資材高騰で建築費が上昇する中、粗利率を上げて売りにくくするのではなく、設定粗利率を20%台前半に抑えつつ、必要原価を絞り、予定外の工事をなくす。お客様には“コスパのいい会社”と映るので販売しやすく、会社にもきちんと利益を残すことができます」と相馬社長は分析します。
効果は絶大で、従来は拾い漏れ等による予定外工事だけで年間1億円以上のロスがありましたが、それを半減。利益率は2年で4%も改善しました。

生産性向上と利益改善を実現する原価管理型受発注システム「すごいよ山下くん」。2年間で4%の利益率改善を実現した仕組みとノウハウが詰まっている。
独自の人材評価制度を運用
もう1つ、経費を極力かけない企業体質を支えているのが、ユニークな人材評価制度。簡単に言えば、役職や社歴に関係なく、社員の純粋な「働き」に応じて年俸が決まる仕組み。営業成績だけでなく、ミスや予定外工事をいかになくすかにも意識的に取り組むようになり、営業・会社・お客様にとって「三方よし」の好循環が生まれています。
このほか、社内の情報共有や議論を効率化するなどの取り組みにより、約70人の社員数で売上高100億円弱、年間施工棟数約260棟を実現しており、生産性の高さは群を抜いています。
住宅FC「デュアルホーム」
新たな挑戦として昨秋、住宅FC「デュアルホーム」を北海道と九州を除く全国で開始。「工務店さんにとって、集客・営業・経営の存続、人手の確保など課題が山積みです。同社が20年以上積み上げてきたノウハウを、ヒト・モノ・カネ・情報の4つのリソースに分けて各社に応じた解決方法を提案できると考えたのです」。
注目の「モデルハウスリース」は、モデルハウスの建築費用を本部が一時的に負担し、月額リース契約とするサービス。さらに、意匠設計や構造計算、SNS運用を一般的な外注価格よりも安く依頼できる代行サービス、原価管理ツール「すごいよ山下くん」を使った業務の見える化とムダの改善など、実効性の高いメニューがそろっています。

アイランドキッチンを採用し、ルーバー天井が印象的なダイニング・キッチン。(hit大野城住宅展示場モデルハウス)

気軽に立ち寄れる、イオンハウジングイオンモール苫小牧店。LDKやユーティリティなどスタイリッシュな空間を体感できる。

小上がりのモダン和室が併設する、タイル張りのリビング(旭川北彩都モデル)
長期保証+設備保証で差別化
昨年新たに始めたことがもう1つあります。それは、同社およびFCで、ジャパンホームシールド(JHS)の「建物長期保証」と「設備保証」を標準仕様に加えたことです。
「営業からは長期保証を望む声が以前からありましたし、保証内容とコスト、企業の信用力、どれをとっても悩む間もなく即決しました。特に小規模のFC加盟店さんの場合、デザイン・性能・コスパがいいだけでは選ばれにくいでしょうから、第三者による保証の安心感が大きな武器になると判断しました」。
導入にあたり、経理部の東宏行さんとJHSの金山昂聖さんが「すごいよ山下くん」を使って密に連絡を取り合い、運用設計を進めました。「7拠点ある事業所の営業スタッフ全員に2種類の保証について細部まで理解してもらうのは難しいのですが、金山さんが力添えしてくれ、当社の業務フローに合わせたマニュアル作成と勉強会を実施できたおかげでスムーズなスタートが切れました」と東さん。開始後の運用変更や、ミス・漏れがないかの月次チェックも金山さんが細かくフォローしてくれるため、短期間で社内に定着させることができたそうです。
営業にも好影響が出ています。「建物長期保証・設備保証が標準でつく会社がまだまだ少なく大きな差別化になるので、(契約が)非常に楽です。しかもお客様は10年、20年先の安心があるかどうかを確かめたいので、細かいことは抜きにして『建物20年、設備10年』というシンプルなメッセージの方がお客様には伝わる」と東さんは感じているそう。保証という新たな武器が加わることで、標準仕様の性能×デザインの強みが際立ち、選ばれる要因になっています。

建物長期保証・設備保証を自社の業務フローにすり合わせ、運用を成功させた、東宏行さん。 「10年、20年先の安心があるということが、お客様にとって大切」。
100億円達成まであと少し
最後に相馬社長に今後の取り組みについて聞きました。「長年のDXで集められたデータをどう活用するかが今年のテーマ。“できる営業”は次アポの意識やタイミングも人とは違うので、それを数値化して分析すれば効率のいい成約手法を見える化できると思うのです。その成果をFCやリフォームにも応用し、新築以外の事業に先行投資をしながら目標の売上高100億円を早く達成したいですね」。

社員とその家族で行った台湾旅行。社員間のコミュニケーションも大事にしている。

右からJHS北海道支店・石川支店長、アーキテックプランニングの永井さん、相馬社長、東さん、JHS北海道支店・金山。






